気功のひろば
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ブログ

2018.11.01

気功生活 Vol.109

流転

静かに、
さらさらと、
切り変わっていく。

 

【目次】

気功と天災 天野泰司
禅密・諏訪合宿 報告&感想
The Book of Life 9/9、10/10
秋の講義録 心を休める・気遣いとは
中有の秋 吉田純子
講座へどうぞ

*特別ふろく 別冊 『季節の気功』

 

気功と天災

天野泰司

季節の気功 パンフ
 待望の『季節の気功』パンフレットが完成し、会員のみなさんに同封しています。今、印刷所から届いたばかりの出来たてほやほやです。
 四季折々にどんなことをしたらよいのか、全体を見渡してお伝えするものを作りたく、保存版の一冊です。少し多めに印刷していますので、まとまった注文もぜひご連絡ください。

天災と病い
 京都北白川では、疎水沿いの桜の葉が色づいてきました。この夏は天災続きでしたが、何事もなかったかのように、美しい秋がもうそこにやってきています。
 天災は、気象や地殻の激しい変動ですが、急性の病気にも例えることができるでしょう。健康に気持ちよく過ごしていたのが、痛みや苦しい症状が急に現れる。病気の場合は、症状を自力で乗り越えることで、体がきちんと整って病前よりむしろ元気になるものですが、無情に思える天災にも、大きな視点で見ると、乗り越えることで得られる貴重な何かがあるのかもしれません。
 気功協会はNPO法人として活動していますが、私たちのような非営利の社会貢献活動グループが公的に認められ始めたのは、1995年1月の阪神淡路大震災以降のことです。全国各地からボランティアが駆けつけ、支援をする当時の様子は、それ以前の社会状況の中では考えられない規模と形態のものでした。
 想像を超える緊急時だったからこそ、人間が本来持っている、他人をなんとか助けたいと思う心が根底から揺さぶられたのでしょう。一般の市民が主体となって、広範囲の、多様で有機的な支援活動が次々と生まれ展開していきました。形式的で決まったことしかできない今までの閉塞的な社会構造を乗り越える新しい流れがここから始まっているように思います。
 こうした市民活動の高まりを背景にして1998年にNPO法が成立し、私たちも2001年に法人格を取得し、誰もが本来持っている「自然の感覚」を復興し、体の自然を護り育てていく活動を公的な立場で続けられるようになりました。

災いを転じる
 家を建て直すなら、一度更地に戻して、何もないところから新しい家を設計したいところですが、一度全部無くしてしまうというのはリスクも大きいし、何事も根本から変えるには勇気が必要です。だから、こうしたいという理想があってもなかなか動けないことがあるのですが、それが目の前の家が天災で突然崩れてしまうと、半ば強制的にゼロからの再スタートを余儀なくされます。震災で家が壊れ、仮設住宅で長く不自由な生活をされた方もありますし、夢だった道場を作った方もありました。
 今年6月の大阪北部の地震では、茨木市の吉田の実家で、ずっと溜め込んできた大量の物がなだれ、以降4ヶ月間、次々と雪崩のように続く出来事に休む間もなく奔走しました。ジェットコースターにでも乗っているような状況も、ようやく落ち着いてきました。
 義父は9月23日に他界しました。病院という望まぬ環境ではあれ、孤高で気性の荒いところもあった人が、これだけたくさんのやさしい心と親切にふれる機会は今までの89年の人生の中でおそらくなかったのではないかと思います。90才になる義母も、まさしく「住めば都」、古都・京都の町中で新しい介護付の環境に慣れてきたようです。暗闇を手探りで探るようで、ずっと悩みの種だった沢山の物や煩雑な資産の整理も、このどたばたの中で、一つ一つの状況がはっきり見えてきて、あとは淡々と進めていけることが多くなってきました。
 苦労も大きかったけれど、光もある。失ったものもあるし、得たものもある。普段のおだやかな変化の中では切り拓けなかったような部分が、やはり変わっているように思います。

 天災に限らず、また病に限らず、何らかの困難や障害が目の前に現れた時に、とても大切なのが心の柔軟性です。どんな変化の中にも多面性があり、光と影があります。天災のような突然の大波を前にすると、まず目に飛び込んでくるのは困難や負の側面です。そのまま心が固まってしまうと、苦しみが増し、気力も失せ、体の力も出せず、解決に向かいにくくなります。
 人間は、行動の前に空想があります。前向きで明るい空想を生み出すためには、心のやわらかさが必要で、その土台は体のゆるみや心地よさにあります。
 困難を前にしたら、まずふーっと息を吐いたり、体を楽に動かして心のゆとりを作り、それから行動に移るのがよいのはそのためです。
 2011年の震災を受けて「心がおちつくやさしい気功」を作りましたが、気功のような心を柔軟にする技術を先に普及させておくことが、広い意味での災害への備えとなるでしょう。

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