妊娠中の食事と体重管理について
産院で出産予定の方から、食事と体重のことで質問がありました。
産院では、毎回体重を計って「なるべく体重が増えないように」「体重が増えて来たら食事に気をつけるように」と指導があるそうで、それが毎回気にかかっていたということでした。
妊娠中に体重が異常に増え過ぎることは望ましいことではありませんし、
食べ物には気をつけた方がよいのはもちろんなのですが、
体重の増減をグラフのように測り、食事指導をしていくことは、
妊婦さんにとっては余分な心理的な負担になりやすいので、避けた方が無難です。
そもそも、妊娠中はだんだんに骨盤が開いてくるので、
ふっくらとした体型になり、体重も自ずと増えていくのが自然です。
そして、産後は骨盤が順々に閉じていくことで、元の体型や体重に戻っていくのが自然です。
約40週かけて骨盤は段々に開き、
約6週かけて閉じていきます。
この産後の骨盤が閉じていく期間の過ごし方で、
産後の体型や体重が変わってくるのはもちろんですが、
今までの身体構造が一度リセットされるので、
妊娠以前に持っていた病気や体の違和感なども解消してしまうことがよくあります。
ですから産後6週間は無理をせず、大変なことはなるべく周りの人にやってもらうとよいでしょう。
そして骨盤を引き締める体操「産褥体操」を一度しておくとよいでしょう。
ここさえしっかり注意しておけば、
お産は、女性にとって最高の美容法になり、健康法にもなるのです。
妊娠中の食事の基本は、
食べたい時に、食べたいものを、食べたいだけ食べることです。
1 食べたい時に…
お腹がすいたら食べる。
そしてお腹が空いていない時には無理して食べない。
2 食べたいものを…
おいしく感じるものを食べる。
不味く感じるものを食べない。
3 食べたいだけ…
美味しいと感じる間はどんどん食べて良い。
美味しさをあまり感じなくなったら、もったいなくてもそこでピタッと止める。
妊娠中は特に、体の野生の勘が働きやすくなっていて、
お腹の中の赤ちゃんが欲しいものも、自分の体の欲求として感じるようになりますから、
体の勘にまかせていくのがいちばんです。
妊娠中は自分一人の体ではないので、時々不思議なものが食べたくなったりします。
小さな頃に食べた懐かしい味だったり、とても明確にあの店のあのメニューだったりします。
そしていざ食べてみると、ちょっとで足りてしまってあとはあまり食べたくない。
それは赤ちゃんの欲求あるいは赤ちゃんを育てるための母体の欲求だと考えておくとよいでしょう。
だから、菜食主義の方がどうしてもお肉が食べたくなったり、
逆に肉食過多だった方が、急に野菜がおいしくなって菜食にシフトしたりもします。
ただ、何が美味しいのかわからない、というように味覚が鈍ってしまっている場合は、
白砂糖の摂取を減らすように指導をします。
そして、なるべく自然で、添加物の少ないもの。
新鮮で質の良いもの。
伝統的な和食を中心に、粗食を楽しむようにおすすめします。
ただ、これ食べたい!と
はっきり体の欲求が現れた時には、
その体の勘に従うようにしてください。
飲酒も喫煙も同様です。
妊娠したら妙にお酒が飲みたくなったという方は、意外といらっしゃいます。
過度の飲酒や喫煙が体によくないのはみなさん判っていることですが、
飲みたいのに飲まない、吸いたいのに吸わないというようにして制限していると、
すごくイライラして来たり、緊張が上手に抜けなかったりしてかえって良くない場合があります。
ですから禁止するのではなく、食事と同じで、
美味しかったら飲む、
美味しくなくなったらそこでピタッと止める。
というようにして、適度にお酒やタバコも楽しんでください。
ともかく妊娠中の食事は体の勘にまかせていくのが一番で、
何が良い、何が悪いという知識的な選択や制限は、
赤ちゃんとお母さんの体の負担になることが多いので、
自由に好きなものを、好きなだけ食べてください。
妊娠中に太ったとしても、産後にきちんと骨盤が閉じれば、
ちょうどよい体型の気持のよい体になります。
天野泰司