気功のひろば
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2019.08.17

添削を終えて・3

(「添削を終えて」2より・天野泰司)

私の担当する
京都造形芸術大学・通信教育課程「身体」の授業で、
今期50名のレポートでは、
実習を続けていくに従って、悩んでいた症状が改善して、
心にも変化が及んでいく様子が見て取れます。

*レポートより

・開始から7日、たった1週間で耳鳴りや肩こりが改善され、
ぐっすりと眠れ、姿勢までもがよくなった。
その上、仕事に対する意欲や取り組む姿勢までもが変わった。

・日々、パソコンやスマホを使う中、肩凝り、首の痛み、腰痛に悩まされてきたが、
7日目には緩和されていることに気づく。また便通も改善された。
ずっともやもやしていた頭の中が霧が晴れていくように徐々に明るくなり、
心の落ち着きが深まり、イライラや焦りが軽減され、
自然に冷静で前向きな考えができるようになった。

・始めてから3週間が経過した。
冷えが改善されたのは本当に大きなことだった。
ゆっくり撫でていると肌の色が本当に綺麗なピンク色になってくる。
体重が2キロばかり落ちた。

・長年、常に肩こり、顎関節症があったのが悩みだったが、
一週間たった頃に明らかに症状が楽になり、3ヶ月たった現在では痛みがほとんどなくなった。
冷え性で毎年エアコンによる手足の冷えを感じるのに今年はそれがない。

・肩こりや腰痛が日ごとに癒され、痛みがなくなっていきました。
体が思うように動くようになると、毎日、前向きに物事に取り組めるようになり、
思いついたことはすぐに行動に移せるようになりました。
感情が豊かになり、美しいもの、自然のものや事に
興味を持つようになり、生活が楽しくなりました。

・・・・・・・・・・

そして、感受性が高まって、より深く、密接に
自分と向き合っていく様子も伝わります。

*レポートより

・息をすることは気持ちのよいことだと感じたことに一番びっくりした。
ゆっくり大きく息をするだけで、指先に血が流れてあたたかくなっていく。
大きなため息をつくと、何か解放された気持ちになり、
体も気持ちよくゆるんでいく。

・風の動きによって葉がざわつく音や、鳥の鳴き声などに耳が向くようになる。

・エアコンを入れっぱなしでほぼ開けることの無かった窓を
1日の始まりに開けて、部屋の空気を入れ替えるようになった。
身近な自然の匂いや音を感じ、季節の循環に意識が向き、
肌で天気や気温を感じるようになり、時間が濃厚になった。

・こんなにも自分の手のひらがあたたかいなんて知らなかった。
自分の体温を心地よいと思うのは初めての体験だった。

・始めた頃、この15分がとても長く感じられたが、
今ではしっかりと日課になっていて、どんなに忙しくても
この時間だけは身体と向き合う時間として確保するようにしている。
この自分と向き合う時間がとても愛おしく感じている。
食事や生活はとてもシンプルなものになってきた。
気功とは「生きる」こと、そのものなのだと思う。

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ここに、身体が元々持っている自然性、芸術性を感じ取ることができるでしょう。

自然に対する感覚を開き、深めていくのか。
その感覚を閉ざし、鈍る方向へいくのか。

方向性は、二つにひとつ。
私たちはそのどちらかを、必然的に選んでいくことになります。

打撲をすると体は鈍ります、
堪え難い痛みから臨時に体を守ろうとする働きとも言えますが、
鈍りが重なると身体の運動や機能は停滞し、その延長には死があります。

この現代には、理不尽な苦しみが多いのではないかと思います。
そして苦しみと出会う度に感覚を鈍らせて自らを守り、
鎧のように、身を固めてきたのかもしれません。

でも、そのまま鈍ることを続けていると、
自ら生命の火を消していくことになり、
他人の痛みや苦しみにも気付かず、
果てには、相手を傷つけたり、ひどいことを言ったりと、
攻撃的になっていくことすらあります。

ある国や民族のことを悪く言う、いわゆるヘイトは、
誰かが意図的に作った偏った情報に乗せられているのが実情ですが、
そうした情報に容易に踊らされてしまう背景には、
やはり鈍りが潜在していると言えるでしょう。

憎悪を募らせていれば、火種があると、争いに発展します。
気遣いや思いやりの心を持っていれば、
多少のトラブルがあっても、力を合わせて乗り越えていけるでしょう。
ですから本当の意味の平和は、相手を自然に思いやることができるような
身体状況を土台にして、培われていくものです。

自分の体に目を向け、隠れていた痛みや苦しみに気づくと、
感覚が日に日に鋭敏になり、
痛みを減らし、苦しみを乗り越える方向へと体が働き始めます。
そして自分の体への気遣いが深まれば、
当然相手にも気を配るようになるでしょう。

同時に、より気持ち良い方向、美しさや幸せを感じる方向へと、
生命の自発的な動きが続き、
互いを大切にしあいながら満ち足りて暮らす、
本当の意味での幸福な世の中へと歩みを進めていくことになるでしょう。

そのための、とても簡単で、誰にでもできる方法として
「気功」はあるのかもしれません。
本を読んで、映像を見て、自然について思いをめぐらし、七日間体験する。
誰の力を借りることもなく、自分の力でここまで心身を変えていけるのであれば、
平和で幸福な未来をイメージすることは容易でしょう。
そして空想は、この世の中を確実に動かしていく原動力となります。
(了)

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