気功生活 Vol.81

いつくしむ

大切に大切に
ありのままの全てを
守り、育む。

【目次】

自然に還る　天野泰司
2014年賀大賞
Selfスイス&イタリアからのお便り
新春5講座・数珠つなぎ講義録　→1/12・1/18・2/9
京都気功散歩　粟田口を歩く
The Book of Lifeから　2/1、2/21
Self桜の便り
春のことばとカラダ
3.11祈る　5.5体癖

自然に還る

天野泰司

新しい波
今回の東京都知事選挙は、とても意義深いものでした。
細川護煕元首相(京都造形芸術大学学園長、整体協会会長)が、
脱原発による安全確保、自然エネルギーでのオリンピック開催などを軸に立候補し、
旧体制との全面的な戦いに挑み連日東京の街を沸かせたからです。

戦後、成長発展を旗印にして続いて来た
政治、外交、経済、報道のあり方の限界を象徴的に示したのが、
3.11の震災に重なった福島の原発事故でした。

原発は安全で、クリーンで、エコで、経済的だというのは全て違っていました。
また、原発が止まると電力が不足するというのも、
全ての原発が現在止まっているので、実はそうではありませんでした。
利益ということのために口裏を合わせ、
いつしかその嘘が真実のように信じられるまでになったのでしょう。
だから、一国の首相であってもその危険性を知らなかった。
その反省もあって、誰もが羨む隠居生活を投げ出してでも、立候補を決意されたようです。

利益よりも大切なものがあります。
いのちを護り、尊ぶことです。
経済成長がなければ生きていけないと考えてしまうような社会的な暗示があちこちにあり、
とかく景気を良くしようとする方向へ流れがちですが、
細川さんが東京都の政策として掲げたのは、
物質文明に対するアンチテーゼでもありました。
原発の再稼動を認めない、負の遺産を後世に残さないことも重要な論点でしたが、
いのちの循環を大切にしてきた日本古来の良さ、心の豊かさを首都東京で花開かせ、
日本中に、そして世界中に広げていこうという壮大なビジョンがありました。

成長発展とは別の、豊かさがある。
その「本来の豊かさ」を全ての活動の軸足にすえることで、
経済至上で進んで来た問題を解決していくことができるはずです。
選挙結果はともあれ、今までと全く質の違う動きが
政治の分野でも出て来たことは大きく評価できますし、
日本の将来に大きな光を灯す選挙戦だったことは長く記憶されることでしょう。

「森の長城プロジェクト」など、
選挙戦以前から取り組んでいた震災後の活動も含めて、
今後の動きに注目しています。

心に火が灯る
Web上に次々と公開された街頭演説や、応援演説、いろんな方との対談を見ていて、
私も何か心に火がつくものがありました。そして自分自身の非力を恥じました。
今、この日本のために、人々の本当の幸せのために、
今まで自分の全力を発揮してきただろうかと。

気功協会は、気功を通じて体の自然の感覚を取り戻し、
お互いに自由で主体的につながり合う
「気功的な社会」の実現を目指しています。
気功という具体的な処方箋を持っていながら、
ちょっとした壁にぶつかってすぐに引き下がっていなかったか。
何かに気兼ねして手渡さないでいるところがなかったか。
もちろん無理に押し付けたり、誇大な広告は慎まなければなりませんが、
自然なことを広く伝えていく工夫がもっとあっても良かったのではないか。
知っていて、うまく伝えてないのは罪では、と。
そういう気持がむくむくと立ち上がって来て、
初心に還って夢を形にしていくスイッチがパチンと入った気がしています。

今年の「気功の学校」は再受講生が多いのが特徴です。
内容も昨年に増してぐんぐん深まっていくでしょう。
年始は特に講座が多くありましたが、
受講してみて去年とは違う何かを感じている方が多いのではないでしょうか。
毎年原点のゼロに戻って、再スタートすることを繰り返してきましたが、
今年は特別に新しい息吹を感じています。

今、自らできることを
全力を発揮して、心からの幸せを感じて生きる。
それは、一生懸命になって努力するということではなくて、
むしろ肩の力を抜いて、心の赴くまま、魂の声に従って自由自在に動くこと。
そういう生き方をする人がこれからどんどん増え、
世の中を変えていく力になるだろうと思います。

そのために、今ここで出来ることがあります。
自らの自然の感覚を開いていくこと。
私たちはお互いにつながり合い、影響し合っているので、
一人の感覚の深化はすぐに周囲に影響を及ぼし、お互いに変わっていくのです。

難しい技術が出来なくても、複雑な型を知らなくても、
シンプルでやさしいことを続けていくことで感覚を高めていくことができます。

ゆっくり自分をなで、手をあて、気持よくゆれる……。
習慣として積み上げていくことで、
心が変わり、体が変わり、行動が変わる。

自分という大自然の懐へ、今飛び込んでいきましょう。